「のぼうの城」を読んだ。

 和田竜の時代小説「のぼうの城」を読みました。映画を観ていないので、登場人物のイメージを勝手に膨らませながら、一気に読み通した。とは言うものの、文庫の帯に野村萬斎の写真が載っているから、成田長親には彼の顔を浮かべてしまった。映画もいいけれど、登場人物のイメージがどうしても限定されてしまっていけないね。今度のレ・ミゼラブルもジャン・バルジャンの屈強な姿がラッセル・クローに決まってしまって、それはそれでいいんですが、もう他のイメージでは読めなくなる。で、「のぼうの城」ですが、これが史実に基づく話だというのには驚きました。平家物語を武士達の大音声と汗と高笑いなどのシンフォニーだと評したのは誰でしたか、そんな文章を思い出しましたね。正木丹波が単騎、敵陣を切り裂いていくところなんか、三国志の張飛や関羽を彷彿とさせます。酒巻ゆき負の智略は諸葛亮孔明。秋月記といい、人物と風景と時代の姿形がはっきりとした物語の読後感はいいもんです。