56才になった。

 去年55才だった。ついこのあいだ、56才になった。おそらく0才だった頃のボクの写真が残っていて、裸で畳に腹ばいになって遊んでいるんだが、この赤ん坊が56年間生きて、こうなったわけで、ナントモ言葉にならない、小さく息を吸ってそのまま吐けずにいるような感慨です。

 ちょっと昔なら、56というと、定年で『お父さん、ご苦労さんでした。これからはのんびり過ごしてください。』という歳だったんじゃないかしらね。

 ところがどっこい、56になったボクは、そんな『しみじみ来し方振り返り』の日々なんてトンデモナイ。今日の息継ぎに懸命の日々です。

 それでも、行きつけの中洲のスナック『凡』で、小さなお祝いをしてくれましたよ。友人のTさんがプレゼントしてくださった極上のチョコレートケーキに56本は無理だから、はしょって5本のロウソクを立てて、カラオケのハッピバスデを歌ってくれました。ありがとう!なんとなく御灯明みたいでしたが。

 患者さんがよく言われます。「先生、歳は取りたくないねえ。」そう、そうでしょう。56なんてまだ若輩だから、70、80の御歴々のそういった感想の真意は分からないんでしょうがね。90ぐらいになると、そういった感想はあまりおっしゃらなくなりますな。

 で、映画「ヴィーナス」です。

 昨年亡くなったピーター・オトゥール主演で、『アラビアのロレンス』「おしゃれ泥棒」『ラ・マンチャの男』の彼の最後の主演作品と言うことで、56才の記念に(意味はあまりありませんが)観てみました。老境というものをカンバスに『生きること』のおかしさと悲哀が上品なタッチで描かれていましたね。56才のボクは、80近いモーリス(ピーター・オトゥール)の恋に全身全霊で賛成。彼女にプレゼントするために老いた身体にむち打って倒れそうになりながら仕事をして金を稼ぐモーリス。そう、仕事のひとつの本質はこれですよ。手術後の尿道カテーテルをぶら下げて、彼女とデートするモーリス。そう、歩ける限り好きな人と歩かなければ、何のための道か。ピーター・オトゥールはよく映画の中で臨終するけれど、この映画でもまた見事な、いい臨終でした。

 

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コメント: 4
  • #1

    そうまきみこ (日曜日, 02 3月 2014 23:03)

    お誕生日おめでとうございます。56歳は、今は、青年のイメージありますよ。世の中に役に立つ技量を習得するのに職種によっては、随分時間がかかりますから。今後のご活躍をお願いします。 ☆本日は、BSNHKで、午後、岩谷時子さん 夜、西条八十さんの特集を90分ずつやっていました。お二人とも大好きな作詞家なので、番組表をみたとき、びっくりしました。犬の散歩もそこそこにテレビに張り付いていました。巷に溢れる言葉を、よくここまで選択して、平明な単語で広く深い情感を伝えられるものだと感心します。

  • #2

    ヒラタミチヒコ (月曜日, 03 3月 2014 18:10)

    メッセージありがとうございます。
    まあ、センテュリアンのH先生がおられますからね。
    要は、停滞しないことでしょう。
    ブーバーが言うように、始めることを忘れなければ、老いというものはない、んでしょう。

  • #3

    そうまキャサリン (水曜日, 19 3月 2014 01:05)

    私は、ピアノを習い始めました。なんと幼稚園の子供と同じ教本を使います。そう「始め」たのです。
    (進度が遅くても恥ずかしくないもんね。不器用なのは生まれつきだもんね)。
    ではまた。

  • #4

    ヒラタミチヒコ (木曜日, 03 4月 2014 23:31)

    ボクは去年一念発起して大型バイクの免許を取りましたよ。
    何で今更、と言われながら、若者に混じって、大型バイクと格闘して免許取得しました。まだ、ビギナーですが、郊外の農道をバリバリ言わせてます。